プレスリリース、比較記事、導入事例、登壇資料。他社のロゴを載せる場面は思っているより多く、そのたびに「これは勝手に使っていいのか」「どの画像を使えばいいのか」で手が止まります。
判断の軸ははっきりしていて、配布元が公式か、形を変えていないか、周囲に余白があるかの3点です。この記事では、その3点を実務で確認できる粒度まで落とします。
使う前に「公式の配布元」を確認する
最初にやることは画像探しではなく、配布元の特定です。検索結果の画像タブや、まとめサイトに置かれたロゴは、解像度が落ちていたり、何世代か前の古いロゴだったりします。古いロゴを使うことは、色を変えるのと同じくらい「間違った使い方」です。
公式かどうかは、次の順で当たると早く済みます。
- 企業サイトのフッターにある「ブランド」「プレス」「メディアキット」「ロゴデータ」といったリンク
- プレスリリース配信ページに添付されている素材一式
- ブランドガイドライン(PDFで配布されていることが多い)
- それでも見つからなければ、問い合わせ窓口に直接依頼する
MediaKit™の掲載組織一覧のように、公式配布を集めた場所から探すという手もあります。配布する側の視点は自社ロゴの「公式配布ページ」を持つべき理由にまとめています。
やってはいけない改変
ロゴは「画像素材」ではなく、その企業を識別するための記号です。だから、識別に関わる要素を触った時点で別物になります。ガイドラインが手元になくても、次の操作はまず認められないと考えて構いません。
NG
色を変える。グレースケール化や白一色への置き換えも、指定がない限り勝手にやらない。
縦横比を崩す。幅だけドラッグして収めるのが一番多い事故です。
影・光彩・傾き・アウトラインなどの効果を足す。
シンボルとロゴタイプの位置関係を組み替える、一部だけ切り出す。
SNSのアイコン枠に収めるため、横組みロゴを正方形に切り抜く・角丸でトリミングする。
OK
縦横比を保ったまま拡大・縮小する。
公式が配布している複数パターン(横組み・縦組み・シンボル単体)から選ぶ。
明るい背景・暗い背景それぞれに用意されたバージョンを使い分ける。
迷ったときの基準はひとつです。公式が配布していない形を自分で作ったなら、それは改変です。白抜きのロゴが必要なのに配布されていないなら、作るのではなく問い合わせます。
クリアスペース:ロゴの周りを空ける
クリアスペース(アイソレーションエリアとも呼ばれます)は、ロゴの周囲に確保する「何も置かない余白」のことです。見た目の問題だけでなく、他の要素と隣接することでロゴの一部に見えてしまう誤読を防ぐ役割があります。
多くのガイドラインは、余白量をロゴ自身の一部を単位にして指定します。「シンボルの高さの1/2」「ロゴタイプのxハイト分」といった書き方です。ロゴを拡大すれば必要な余白も比例して増えるので、px固定ではなくこの相対指定が使われます。
指定が見つからない場合の実務的な逃げ道として、シンボルの高さの半分を四辺に確保しておけば、ほとんどのガイドラインの要求を満たせます。狭くするより広い分には問題になりません。
MediaKit™で公開されているキットでは、クリアスペースの図がロゴ実物から自動で描かれ、単位(シンボルの高さ、文字の高さなど)も併記されます。読み方はダウンロードガイドで説明しています。
最小使用サイズと背景
最小使用サイズ
小さくしすぎたロゴは、細部が潰れて読めなくなります。ガイドラインでは「Web表示で幅24px以上」「印刷で幅15mm以上」のように、用途別の下限が指定されていることが多いです。名刺やノベルティなど小さい面に載せる場合は、ロゴタイプ入りの横組みではなくシンボル単体が用意されていないか確認してください。
背景
背景については、コントラストが確保できるかがすべてです。写真の上に直接置くと、背景の明暗が場所によって変わるためどのバージョンを使っても読みにくくなります。その場合は、ロゴを載せる範囲だけ単色の帯や角丸の面を敷くのが定石です。
商標権と著作権 — 何がどう守られているか
ロゴには、性質の違う2つの権利が同時にかかっていると考えてください。混同すると判断を誤ります。
商標権
商標権が禁じているのは、出所を誤認させる使い方です。他社のロゴを自社の商品やサービスの目印として使えば侵害になります。一方、その会社を指し示すために表示すること(いわゆる指示的な使用)は、商標の機能を害さないため、一般に問題になりません。比較記事で対象を示す、取引先として紹介する、といった使い方がこれにあたります。
著作権
ロゴの図案には著作権が生じる場合があります(文字だけのロゴは認められにくく、図案性の高いシンボルほど認められやすい傾向があります)。こちらは出所の誤認とは無関係に、複製そのものを対象にします。ただし報道・批評・研究といった目的で、必然性のある範囲で引用することは、出所の明示など要件を満たせば認められます。
許可が要るケースと、依頼の仕方
事実を伝える目的での表示は、一般に許諾なしで行われています。逆に、次のような使い方は誤認を生むため、事前確認が要ります。
- 自社サービスの画面やパッケージにロゴを載せ、提携・認定を受けているように見せる
- 推薦や導入を示唆する文脈で使う(実際に許諾を得ている場合を除く)
- 他社ロゴを自社の資料テンプレートやアイコンとして継続的に使う
自社サイトの「導入企業ロゴ」欄はどうか
もっとも相談が多いケースです。実際に取引がある事実を示すだけなら指示的な使用にあたりますが、掲載は「この会社が我々を推している」という印象を与えるため、事前に許可を取るのが実務の標準です。多くの企業はロゴ使用ポリシーで「導入事例・顧客一覧への掲載には事前承諾が必要」と定めています。
あわせて、取引が終了したときにどうするかを最初に決めておいてください。掲載したまま何年も残り、契約終了後も「導入企業」に並んでいる、という事故がよく起きます。
依頼メールに書く4項目
窓口に確認するときは、先方が判断に必要な情報を最初に全部渡すと一往復で終わります。次の4点です。
- どこに載せるか(自社サイトの導入企業欄、プレスリリース、登壇資料など、URLか媒体名まで)
- どう見えるか(周囲の文言、他社ロゴと並ぶか、サイズ感。可能ならスクリーンショットを添付)
- いつからいつまでか(掲載期間、終了時に取り下げる旨)
- どのデータを使うか(公式配布のどのバリエーションか)
ガイドラインに「事前承諾が必要」と明記されている場合はもちろん、判断がつかないときも、確認した記録が残ること自体に価値があります。
公開前チェックリスト
掲載前に、次の6項目を上から順に確認してください。
- 公式の配布元から取得したファイルを使っているか
- 現行のロゴか(数年前の記事から拾っていないか)
- 色・比率・効果を変えていないか
- 周囲にクリアスペースを確保しているか
- 表示サイズが最小使用サイズを下回っていないか
- 背景とのコントラストが足りているか
この6項目は、逆に言えば自社のロゴを配布する側が答えを用意しておくべき項目でもあります。使う側が迷わない状態を作れているかは、そのまま誤用の量に跳ね返ります。答えの書き起こし方は小さな会社のためのブランドガイドラインの作り方を参照してください。